あの日　わたしは

福島県南相馬市- 走り出そうと思ってサイドブレーキを下ろした瞬間に、車がふわっと浮いて、ハンドルが利かなくなって。足元からですね、どんどん水が入ってきて。最後はこのへん（目の高さ）まで来た。福島県南相馬市小高区・塚原（つかばら）地区の副区長を務めていた今野由喜（こんの・よしき）さん。住民に避難を呼びかけたあと、自分は逃げ遅れ、車ごと津波に流されました。震災当日、自宅で激しい揺れに襲われた今野さん。すぐに家族を避難させたあと、近所の人たちに高台へ逃げるよう、呼びかけて回ります。とにかくその「早く逃げろ」と。高い所にね。できる限り大きな声でね、言って、会った人には直接ね、とにかく「逃げろ」と。その後、今野さんは、自分も避難しようと、車に乗り、高台を目指します。その途中、町の集会所に立ち寄りますが、そこには誰もいませんでした。