あの日　わたしは

岩手県宮古市- 何秒だべ。おそらく何秒かでもう、一瞬のうちで部落が壊滅した。何もなくなった。波の色も何も、見ないで、逃げるだけで手いっぱいだったね。岩手県宮古市重茂（おもえ）地区で漁業を営む石村辰五郎さん。消防団の仕事で、地区の見回りをしている最中、自宅が津波に襲われました。石村さんの自宅は海からおよそ３０メートルの高い場所にありました。９０年前に建てられ、これまで津波の被害を受けたことはありませんでした。地震が収まったんで、俺は消防の本部付きの分団長をやっているので、とりあえず警戒に出るからと、そのまま、はんてんを着て、出てくるときに、息子が浜から孫と一緒に車で上がってきた。「津波が来るから浜へ絶対下りるな」としゃべって。自宅までは津波が来るはずがないと思った石村さん。母親と孫を自宅に残し、地区の人たちに避難を呼びかけるため、息子と一緒に港へ向かいます。