被災地派遣報告

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丸尾 栄基
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Japanese
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被災地派遣報告
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被災地派遣報告 北海道室蘭市職員 丸尾  栄基  私は室蘭市職員の丸尾と申します。平成25年1月16日から3月15日までの2ヶ月間、岩手県釜石市において、市職員として被災地派遣業務に従事してまいりました。わたくしの業務自体は直接復興に携わるものではありませんでしたが、休日を利用して北は岩手県宮古市から南は宮城県石巻市までをご案内頂くとともに、震災に関連する様々なお話をしてくださった現地の方がいらっしゃいました。その方が「震災による被害や我々が感じた教訓を少しでも多くの方に伝えたいがため、今回様々な場所を案内させてもらっています。」とおっしゃっていたこともあり、ご説明頂いた内容や私が見たもの・感じたことを以下にレポートとしてまとめたいと思います。  まず、岩手県の陸前高田市では、海に程近いあるアパートの4階部分まで破壊されている光景を目にしました。つまりこのアパートでは5階にいなければ被害を免れることができなかったということです。さらにこのあたりは1キロ以上先までも、ほぼ同様の高さのまま津波が押し寄せてきたそうです。陸前高田市には4階建以上の建物は多くなく、居住地のあたりは山の無い平野の広がる場所であったそうです。よって走って逃げられる範囲に安全な場所は数少なく、かといって震災時の車での避難は、揺れや渋滞・放置自動車の影響などで困難であったことからより大きな被害となってしまったとのことでした。  私の勤務した釜石市のすぐ北にある大槌町も、私が訪れた町の中で特に大きな被害を受けた町のひとつです。大槌町は人口の1割近くもの人が犠牲になり、さらに町の中心地が海にほど近い場所であったため、市役所や主要商店なども被災した結果、一時多くの機能を失ってしまった町のひとつです。現地を訪れた際にお話を聞かせて頂いたある方は「人口の1割が亡くなり、主要部が機能しなくなった状態では、感覚的には町が壊滅したという気持ちになります。」とおっしゃっていました。  大槌町からはさらに北に向かって宮古市を訪れました。この市の田老地区という場所は、防災の町として全国的に有名で、万里の長城とよばれる高さ10m、長さは2,400m超にも及ぶ長大な防波堤がありました。しかし、X字型に2重にめぐらせてあったこの防波堤も津波の被害を食い止めきることはできませんでした。私を宮古市まで連れてきてくださった方は「この堤防を見て、津波はハードでは守れない。ソフトで守るしかないということを知って頂きたかった。」とおっしゃっていました。どんなに強力な堤防を築いても津波の被害を完全に食い止めるには至らず、より大事なのは人の意識のほうであり、普段から避難経路を把握し、津波が起きたらどうするか、真っ先に逃げる。という気持ちを常に1人1人が持っていることこそが、津波の被害を最小限に食い止める最大の方法であるというお考えでした。この「ハードでなくソフトで守る。」という言葉はこの方が折に触れおっしゃっていたことであり、私の記憶に強く残っている言葉です。  さらに別の日には宮城県内も案内していただきました。宮城県で私が実際に見てきたものの中で最も印象に残ったのは、南三陸町の防災センターです。南三陸町の防災センターでは、24歳の女性市職員の方が、津波に襲われる瞬間まで避難を呼びかけ続け、そのまま犠牲になったということでした。私と同じ市職員という立場の方のお話であったこともあり、いろいろと考えさせられました。  また、隣の気仙沼市では陸地に船が流れ着いている光景も目にしました。もちろん津波によって流れてきたのですが、この場所から周りを遠くまで見渡しても海は見当たらず、実際に船を見てもその状況を想像することもできず、あらためて津波の凄まじさを感じました。また、この船は住民の意向で解体されることとなり、解体・リサイクル作業は私の住む室蘭市のNPO法人が受け持つことになったというお話を当時伺いました。  延べ2日間にわたって被災地を案内して頂く間に、同行してくださった釜石市職員の方から、ご自分が被災された際の話もして頂きました。特に避難所で生活するにあたって、欲しかったものやあって助かったものについては、いろいろなお話を伺いました。必要だったものとしてまず挙がったのは、水と衛生物資です。「最初の数日はとにかく水が不足したが、次の1週間は衛生面の問題が大きかった。飲むだけの水は数日で手に入りましたが、衛生面には回せず、みんな痒さで頭をかきむしっていました。食事にしても米はあっても容器はないので、川から流れてきたかんずめの缶を拾い、捨てないようにしてずっと使い続けました。私のいた避難所では食料や水は2,3日我慢すれば生きていく分だけのものは何とかなりましたが、私が一番必要だと感じて手に入らなかったものは紙皿や紙コップでした。」とおっしゃっていました。必要だが不足したものの一番は衛生物資であったとのことです。  次に、光源・発電機も重要であったとのことです。とにかく避難所では光が大事で、まず真っ暗闇では何一つ動けないので懐中電灯は必須で、できれば大きなライトなどの明かりも準備しておいたほうがよいということでした。大きな明かりがあればみんな自然とそこに集まってくるもので、人間は光があるとないとでは、心のありよう・安定感が全然違うとのことでした。また、発電機は前述した大きなライトの使用にも必要ですし、お話を伺った方の避難所にはぜんそくのお子さんがいて、治療の機械を使う必要があったそうです。そのために発電機が必要であったが、避難所にたまたま発電機があって助かったとおっしゃっていました。  他に、大人は災害時興奮していることもあり、少しくらい食べなくても意外と我慢できるが、赤ちゃんはそういうわけにはいかないので、粉ミルクやおむつは必須だというお話や、自衛隊などがある程度道を作ってくれた後は、食料や支援物資の運搬や連絡、報告などのため一日に何度も市などが運営する災害対策本部に行く必要があり、その際は車を使用したが、ガソリンが非常に少ない状態だったので、いつ切れてしまうか大変不安だったというお話も伺いました。  このように避難所で必要なもののお話をいろいろ伺いましたが、特に私の印象に残ったのは名簿・ラジオが重要であるというお話でした。名簿というのは避難所に備え付ける避難者名簿で、その避難所に誰が避難しているかを記すものです。お話を伺った方の避難所には、盛岡から歩いて山を越えて釜石の避難所まで家族を探しに来た方もいたそうで、そういったこともある中で、さまざまな要因で混乱しがちな避難所の中に誰がいるのかを常に把握しておくことはとても大切だとのことでした。また、この避難者名簿を一日中読み上げてくれた地元のラジオ局が大変ありがたかったというお話とともに、避難所を指揮した方々の中には、自分の名前を名簿に書いていなかった方もかなりいらっしゃって、結果その方々の名前はラジオで呼ばれることがなく家族が大変心配したという例があったということで、名簿には忘れずに全員の名前を書くべきだとおっしゃっていました。  現地に滞在している間に「被災による痛みは決して消えないと思う。」「震災直後はみんな気が張っていたが、今のほうが先の見えない状況で元気がなくなっている。」という内容のお話を何度か伺いました。被災後から不眠症になり、今も睡眠薬無しでは眠れない方もたくさんいらっしゃるということでした。しかし、実際に接する釜石の方々は、親切で、前向きで、力強く優しい印象だけを私に残しました。また、震災から2年近くが経過した被災地は、瓦礫の処理があらかた済んだ場所も多く、一見しただけでは何が起こったのか分からない場所が多く見られました。  2か月間被災地に滞在しただけの私には震災のことは分かりません。ただ、とても温かく接してくださった釜石のみなさんの今後の幸せを願うばかりです。私を案内してくださった方は「被災地の人たちは忘れられてしまうことを一番心配している。」とおっしゃっていました。機会があって被災地を訪れたものとして、せめて『震災を忘れず』という気持ちはこれからも持ち続けたいと思っています。このレポートもその一環として取り組ませて頂きました。
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