立花書房 講座警察法  第三巻 ◇コラム◇ 東日本大震災への対応状況 5 

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立花書房 講座警察法  第三巻 ◇コラム◇ 東日本大震災への対応状況 5 
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立花書房 講座警察法  第三巻 ◇コラム◇ 東日本大震災への対応状況  pp.724~729 竹内 直人 7 公安委員会報告等 3月23日に、発災後初の公安委員会が開催され、事務的な経過報告のほか、「本部長としての対応」を報告した。以下、その報告資料(一部割愛)を引用する。 今次地震津波災害への対応状況(本部長として) ( 1 )  基本姿勢 ◯ 未曾有の事態。県警としてやれることにも限界があるが、県民のため、やれることはすべてやる覚悟で臨む。部門を超えた全職員のチームワークがカギ。 ◯ 長期戦を覚悟する(仮眠をしっかり取る、取らせる)。非常に厳しい勤務条件(特に現場)だが、県民はもっと辛いと認識。 ( 2 ) 部内統率・士気高揚 ◯ 幕僚班長会議(当初毎日1回、現在週3回)での各種指示 ◯ 「全職員へのメッセージ」(17日) ◯ 人事異動オペレーション(:∙ 定年退職者が新年度にはもはや勤務できない)   年度をまたいで現在の非常時体制とその運用を継続することが目的   所属長ポストに間隔を生じさせないため、必要最小限度のみ年度末に実施   大規模な異動を内示通り強行することは、非現実的。なお当分の間凍結 ◯  各署長への書簡(19日) ( 3 ) 県庁災対本部会議(3月22日まで29回) ◯ 検視状況の紹介とご遺体安置(収容)場所確保のための各種調整 ◯ 政府(注:内閣府副大臣等同席)への要望時資機材等 ◯ 「市町村長に対するお願い」の発出・発表(16日) ◯ 「被災後10日間の治安状態について」(県民メッセージ)の配布(22日) ( 4 ) 警察庁との調整 ◯ 応援派遣部隊の増強交渉(特に交通部隊) ◯ 検視特例通達発出の要請と内容調整 ◯ 緊急通行路交通規制の方針調整 ( 5  )各種の創意工夫+重要判断事項 ◯ 行方不明者相談ダイヤルの早期立ち上げ:12日開始。 現在50回線、97名(免許センター35名*2、県消費者センター8名)30,282人分(21日現在)の相談受理 ◯ 上記ダイヤルで相談を受けた「行方不明者」一覧:15日よりHP登載 ◯ 「所持品等から推察される氏名等事項の一覧」:16日よりHP登載 ◯ 市町村オペレーション(16日〜):所属長級による各市町村への説明 ◯  検視班からの遺族支援班の分離と増強(18日〜) ◯ 「身体的特徴等事項の一覧(+発見場所・収容場所)」:18日よりHP登載 ◯  遺体収容状況予測のための在庫管理的シュミレーション ◯  行方不明者と遺体の身体的特徴的事項等の照合、遺体関連情報からの追跡調査(20日〜) なお、公安委員会は、全国からの応援部隊派遣に関し、警察法第60条の規定に基づく数多くの要請(12)を行ったほか、被災地に対する視察督励等を積極的に実施した。  (12)法律上は「援助の要求」である。本来、個別・事前の決裁を要するとの見方もあり得ようが、今回のような大規模かつ長期の派遣には警察庁による詳細な事前調整が不可欠であり、むしろ、一定期間の派遣部隊の状況をとりまとめるような形で、事後的に要請文を整える(すなわち追認する)ケースも多々あったと認識している。このような「有事」型の決裁手続きに関しては、一定範囲の特例を許容する内部規定等を整備していたところであるが、今回は、この種の特例的手続きが相当長期に及んだと認識している。  このような現状をどうみるべきか。警察法第60条第2項は、「援助の要求」の際にはあらかじめ(やむを得ない場合は事後に)警察庁に連絡すべき旨を規定しており、警察庁が事前調整した派遣計画案に沿った「援助の要求」は、むしろ同項の趣旨を究極的に体現しているのかもしれない。また、「援助の要求」及びその受諾の主体である都道府県公安委員会が、必ずしも、上記のような現状を問題視しているとも聞かない。  したがって、現状の改善が必要かどうかについては、見方が分かれるところであろうが、立法論的には、例えば、次のような改善措置案があり得るか。すなわち、今回のような大規模かつ長期の派遣に関しては、国の警察機関(国家公安委員会及び警察庁)が派遣計画案(派遣人数、派遣元、派遣先、派遣期間等に関するもの)を主体的に起案し、都道府県警察(公安委員会を含む広義)との間の事前調整を経た上で、これを関係公安委員会連名の形で決定(細部は警察庁並びに警視庁及び道府県警察本部に委任?)することにより、個別の援助要求と受諾に代える。このような手続について、例えば、警察法第60条の規定に関する実施命令としての国家公安委員会規制(警察法施行例第13条第1項に基づくもの)で定めておくことが考えられるのではないか。ちなみに、「全訂版警察法解説」355頁は、都道府県警察(とあるが具体的には公安委員会であるべきか)の協議により、要求の手続等を定めることは可能であるとしている。 8  現場の職員の奮闘  現場の職員は、極めて劣悪な勤務環境の中、余震の恐怖(=津波再来の恐怖)と戦いながら、それぞれの任務を立派に果たしてくれたと強く認識している。  東日本大震災は、一人ひとりの職員や組織全体にとって、極めて大きな試練であったが(13)、一方で、警察官や警察組織が相当鍛えられる絶好の機会ともなった。例えば、厳しい現場に身を置き、被災民の切実な声に直接接することで、まさに、身をもって、警察の原点を改めて体得できる(14)。  (13) 特に、管区出向者を含め、14名もの殉職者を出したことは、管理者として、ただただ、慚愧の念、苦渋と無念、断腸の念に堪えないところであり、筆舌に尽くしがたい心境で一杯である。殉職者を出さないために、今後どうすべきかについて、平成24年7月4日の警察政策学会シンポジウムで、片田敏孝教授(群馬大学)と若干の討論を行った。参考:警察政策第15巻66−69頁  (14)例えば、発災後急きょ現場に派遣された警察学校初任科生総代は、卒業式(3月29日。筆者も含め、全員出動服で、立ったまま開催)答辞で、「微力ながら災害現場活動に従事し、改めて警察の存在意義を強く自覚しました。殉職された先輩警察官の強い使命感と勇気を受け継いで、1日も早い宮城県の復興と県民の安全安心な生活の回復を目指し、何事にも屈しない勇気ある警察官として、誠心誠意、全力で職にあたることを誓います」と述べた。参考:平成23年5月1日付け産経新聞「警察の使命感 学校生時に知った仕事の重さ 初任務は遺体をふくことだった」 9 おわりに  大震災への対応を思い返すと、万感胸に迫るものがある。平成23年7月、宮城県警察の部内誌に次の詩を掲載したところであるが、これを再掲することで、結語に代えたい。 「心はひとつ〜災禍克服の賦(ふ)〜」 かくも巨大な災害が 何ゆえ我らを襲いしか わからぬままに天仰ぐ 廃墟と化した現場にて 帰らぬ人を思うとき 切なさのみの込み上る あの時の寸刻前に戻れれば かくはならじと思う儚(はかな)し かかる時こそは警察は 踏ん張るべしとの我が檄(げき)に 見事に応えし全職員 被災住民、そのために 倦(う)まず弛(たゆ)まず今日にもまた 一意専心勤めいる 忘るまじ その職員の被(こうむ)りし難の重さと家族の思いを(15) 全国警察一体の 長期多数のご支援の 言葉に尽くせぬ有り難さ 捜索、検視にパトロール 交通誘導、訪問など すべてに感謝ただ感謝 ひたすらに励む諸兄の姿こそ 絆の証(あかし) 永遠(とわ)に讃(たた)えん 職に殉ぜし警友を 思えば涙と慚愧の念 苦渋と無念 断腸の念 せめてご遺体ご遺品を 発見せんと務るも がれきを渡る海風むなし 良くやった 辛かったろう 最期まで尽くした君は 我らの誇り 未曾有の事態に立ち向かい 長期の苦労も乗り越えて 宮城県警ここにあり 県土復興の礎(いしずえ)は 治安にありと信じつつ 諸事に最善尽くすのみ 「手をつなぎ 心はひとつ」に頑張ろう いずれは天も我らを嘉(よみ)す  (15)平成24年警察白書39頁「警察活動の最前線 被災県警察の声」に河北警察署川村巡査部長の「踏ん張る警察官の意地」が掲載されており、ご家族(夫人、2歳7ヶ月の長男、7ヶ月の長女)が行方不明のまま、黙々と捜索活動に従事する同僚(駐在所員)の様子を紹介している。その後、当該同僚のご家族は、3人とも遺体で発見された。同夫人を含め、駐在所で被災し、犠牲となった駐在所夫人2名に対し、警察庁長官感謝状が出されている。 (終) ********** 講座警察法 第三巻 2014年(平成26年)3月10日 初版発行 より抜粋。2011年東日本大震災デジタルアーカイブウェブサイトのテキスト方式に合うように一部編集されて掲載しております。 「講座警察法 第三巻 掲載 ◇コラム◇ 東日本大震災への対応状況は」 元宮城県警察本部長 竹内直人氏、立花書房より了解を得ております。心より御礼もうしあげます。
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