福島県避難 12 市町村 イノシシ被害対策技術マニュアル 　復 興 庁

福島県のイノシシは、阿武隈川以東の地域において長い間安定的に生息していたが、平成6年頃を境に個体数は増加傾向を示し、阿武隈川以西の地域に生息域を拡大している。それとともにイノシシによる被害は増加し、福島県における獣害のうち面積、金額ともに7割を占めるようになった（福島県「イノシシ管理計画」より）。 この最中、平成23年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故のため、福島県内の沿岸部を中心とする市町村に避難指示区域が設定され、住民が居住しない地域が広範囲に渡って生み出された。当該地域では避難指示の解除が順次なされているものの（図1参照）、長期間に渡り住民が不在の状況が継続した結果、避難12市町村では、市街地において野生鳥獣被害、とりわけイノシシによる不在住居への侵入や、庭先や畑の掘り返し等の住宅被害が多発するようになった。 さらに、昼行性など大胆な行動への変化、個体数の大幅な増加などが進行し、住民の不安が増幅され、帰還への大きな阻害要因となっている。 住民の帰還をより一層促し、平穏な生活を取り戻すためには、除染や社会インフラ整備だけでなく、人の生活空間から野生動物を排除して人身被害の発生するリスクを最小限にし、生活への不安を払拭することが必須課題となっている。そのためには、地震や原発事故により希薄となった地域住民同士のつながりを取り戻しながら、総合的かつ広域的な鳥獣被害対策を推進することが必要である。 この対策をより効果的なものとするためには、帰還状況に応じた実現可能な対策を選択するとともに、その対策を持続していくための人材育成や実施体制の確立が求められる。