理論から繋げる津波対策

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今は復興、復旧を急ぐということもあるけども…その後は逃げればいいとどこかで割り切っちゃってる部分があって、それは本当は恐ろしいことなんですよね。
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Tokyo Foudation
Geolocation
38.4344802, 141.3029167
Location(text)
宮城県石巻市
Latitude
38.4344802
Longitude
141.3029167
Location
38.4344802,141.3029167
Media Creator Username
Interviewee: 大江康博さん, Interviewer: 葛西陽介
Language
Japanese
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Japanese Title
理論から繋げる津波対策
Japanese Description
今は復興、復旧を急ぐということもあるけども…その後は逃げればいいとどこかで割り切っちゃってる部分があって、それは本当は恐ろしいことなんですよね。

自己紹介-津波というものはどういうものかを話したい-

大江康博(おおえやすひろ)です。生年月日は1948年12月1日です。今回は震災の体験というよりは津波というものはどういうものかを話したいと。今回の震災は大きな地震、それと大きな津波でかなり大きな被害が出たんですけども、はっきり言うと、地震の部分ではどっちかっていうとあまり大きな被害は出てないはずなんですよね。問題はやはり津波の被害がね、非常に大きかった。ただどうも調べるとあまり津波ということに関して皆さん良く分かってないと。ですからそういうことを今回の被災体験にあわせて、我々はよく津波のことを知らなかったということを伝えてもらったほうが有意義かなと思っているんです。ただ、私の理解がひょっとしたら間違っているかもしれないけども、私なりに理解している範囲で話しても良いかなあって。

当日の状況-帰るときは悲しかったことは間違いないですね-

地震が収まって車で会社に向かおうとしたんですけど、その時には水が吹いていたんですよ、道路に。多分、液状化でしょうね。後で聞いたら、一緒に会議していた人はその時に吹いてきた水で車が浮いてハンドルが使えなくて、車を置いて逃げたと言ってました。私はたまたまエンジンをかけたら車が動いたんですけど。その時は何の水だろうと思ったんですけど、よく考えたら液状化でしたね。泥水というか灰色がかった茶色の水。じわじわじゃなくて水道管が破裂して地下から吹き出すような感じ。道路もね、亀裂が走ってました。そんなに大きいものではないですけど、だけど多少段差はついてました、何カ所か。地面のいろんなところから吹いている感じ。最初は何が起きてるか分からなくて。そこで会社に行って、みんな逃げろって言ってその後2階の事務所に行って必要なものだけ持って、さて逃げようかと思ったんですけども、ちょっと足を痛くしていたもんですから走って逃げるわけにもいかないかなと、だけどここならなんとかなるかなと。それで一応、残りまして。結果的に助かりました。

いろんなものが流れてきましたね。なんでも。固定されていないものは何でも流れてきましたね。車も家も、工場にあった機械類も。鉄のかたまりなんかみんな流れてきました。後日ですけど、そこの日和山でね、流されていく人の声を聞いたという人もいたんですけど、私は聞くことはなかったですね。建物の中は視界が狭いわけですから周りの状況はあまり見えないですね。

工場で一晩過ごして。怖かったのは何も情報がなかったもんですから、津波がいつ収まるとか予測できないんですよね。私が決心して逃げ出したのは翌日のお昼の12時をきっかけにじゃあ行こうかと。逃げるときは道路は家でふさがれているし、瓦礫や流れた家で「道路はどこ」という感じでしたね。帰るときは悲しかったことは間違いないですね。みんな壊れてますから。途中でおじいさんと会って二言三言話して。向こうも放心状態でしたけどね。瓦礫とか家が道をふさいでいるわけですから、本当にこの方向で帰られるか分かりませんでしたけど、そういうのは会う人みんなに聞いてね。みんな教えてくれるんですよ。私も会う人にはこっち行けるよとかそういうの話してましたね。

過去の体験-子供ながら強烈に憶えているもんなんですね-

地震が来たときに波が来るというのは頭になかったですね。かなり強い地震があったことは間違いない。ただそれが収まるかなって時にまた大きくなって。今まで経験した揺れではなかったのでかなり強いなって分かっていたので、車に乗ってラジオを聴いていたんです。そのラジオで津波警報が出てて。津波情報ではその時では6mだって聞いたんですよ。地震発生時は魚市場で、会議中でした。それで会社に戻って高台に逃げなさいという話をしました。津波に関してはですね、チリ地震の体験もあったんですけど、あの時は床下で、今回とは桁外れに小さい津波です。あれを経験しているからといって今回の津波を予想できたかというと多分予想できないですね。ただですね、私が小学校低学年頃、1933年の昭和三陸津波の時に実は水はここまで来たんだよ、っていう痕跡が家にあったんですよ。家の茶の間の棚に、床から計ると1.5mくらいの高さに筋があって、ここまで来たんだよって聞いてまして、子供ながら強烈に憶えているもんなんですね。今回ね、私の家のすぐ後ろの家に住んでいる人が私がそういう話をしたら、その人のおじいさんが神棚に上って助かったんだ。という話をしていたので、だから床上1.5mは間違いないなと確信を得ました。それとね、津波の話でいうと3月12日、その水がある中を逃げてくるときに、途中で80歳前後のおじいさんがいましてね。それで声をかけたんですね。そしたらその人が言うには、私は小さい頃に、三陸津波を経験してたんだけども、今回はあれより酷かったなと言ってたんですよ。

津波への疑問-我々はよく津波のことを知らなかった-

まず1つは、地震が大きいと津波も大きいと一般に思われているんですけど、どうもそうでもないようなデータがあるんですね。実際に津波の高さと地震の大きさをグラフにしたのを見たら確かに相関性はないなあって。それから昔から、津波っていうのは引き波から始まるみたいに言われるんですけど、そのことに関してはどの本を見ても明確にその理由を伝えてない。ですから津波の本当のメカニズムは分からないという状況になっているんじゃないかなと思っているんですけどね。

津波の評価について-どうもおかしいなというとこから調べ始めたんです-

実は、今回の津波に対して県が津波防災上の堤防を作ろうという話があるんですね。その津波の防災上の堤防の高さを何mにするかということを調査するために、昔の津波の記録を整理して、どういう高さの津波があったかを調べています。でも、昭和三陸の津波の残っている評価があまりにも低いなと思って調べて、よく考えたら昭和35年くらいまでは石巻の海岸線には誰も住んでいなかったんですよ。今は港だとか魚市場だとかありますけど、あそこはなかったんです。もし海岸線に人が住んでいればかなり高い痕跡が残っているんでしょうけどまったくいなかった。それで昭和三陸の記録が石巻の海岸の場合は2mくらいになってる。それじゃあ足りてないよ。私の住んでいたところでは床上1.5m、地面から2m、それに今回の地盤沈下を含めて2.7mくらいですから、海岸線にするとその3倍の6mとか8mとかそういう数字になるわけですね。

津波を理解から対策へ-ちゃんと整理して対策をしないといけない-

それで津波の理論の発端はですね、海底が持ち上がって水が持ち上がると。持ち上がった水が重力で周りに流れていくと。こういうことを前提とした計算をしているわけ。でもね、持ち上がって流れていくっていうのは分かるけども、引き波から始まるっていうのはどうやって説明できるのか。今回も金華山の海底が見えたと。石巻漁港でも水が引いてそこを見たって人が何人かいるみたいです。そういう話がほとんど整理されていないんです。

それで、もう1つ色々調べると、地震の震源の深さと津波との関連もですね、浅いから津波が間違いなく起きるとか深いから起きないというのもないみたいなんですよ。だから我々の一般に考えている地震と津波との関連とは繋がらないんですよ。そこが一番の問題で専門家もそこを説明できないから、我々にもそういう知識として理解されてないんでしょうね。津波の勉強に関しては津波の専門書見ても書いてない。

今回の震災に関してはデータの整理はまだやってないような気がしますね。普通であれば、一般の会社ではトラブルがあればその原因と結果をちゃんと整理して、対策はどうすると明確に出すわけですね。例えばですね、今回車に閉じこめられてドアが開かなくて逃げられなくて亡くなったか方が結構いると思うんですよ。そうであれば、道路は水が来ないような道路にしないとダメとかね、普通はそういう対策を考えるじゃないですか。でも我々はまだ、どういう状況の方が犠牲が多かったとか多分聞いたことないですよね。だから、今回の事象と被害との関連がまだ何も整理されていない。本来はちゃんと整理して、それを元にこういう対策をしないといけないということがあるんだけども、今は復興、復旧を急ぐということもあるけども、何となくね、津波の方はここまではやるけども、その後は逃げればいいとどこかで割り切っちゃってる部分があって、それは本当は恐ろしいことなんですよね。だって本来取るべき対策が取られてなくて、本質的な対策でないものが取られている可能性があるわけで。そういう意味ではそこをちゃんとね、整理して、本当の対策を取るべきだと思うんです。

今後の対策-一般の方にも知ってもらいたい-

こういう理論から対策に繋げるのは地方自治体では無理だと思うので、国レベルで対策を考えないと。津波の破壊方向がどうだとか、そういうところを調べないといけない。そうなるとこれからの調査のポイントもかなり違ってくると思うんですよね。過去のデータといっても、要するにどれだけ大きい地震があったかということと、津波がどこまで遡上したかという痕跡でしか調べてない。そういうことだけ調べても実際に津波のメカニズムが分かったことにならない。だから100年に1度とか1,000年に1度という整理自体が無意味ではと思うんですよ。ただ、一般にはデータが伴わないと理解してもらえないんですよ。たけど、場合によってはこういうことも考えられるよという情報は一般の方にも知ってもらいたいですね。

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