津波は直接見た人じゃないと分からないことがある

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津波は直接見た人じゃないとやっぱり分からないことがあるよ。テレビと違ってあまりにも酷かったんですよ。
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Tokyo Foudation
Geolocation
39.0151207, 141.6294866
Location(text)
岩手県陸前高田市田束地区
Latitude
39.0151207
Longitude
141.6294866
Location
39.0151207,141.6294866
Media Creator Username
Interviewee: 村上リヱさん, Interviewer: 川口圭大
Language
Japanese
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Japanese Title
津波は直接見た人じゃないと分からないことがある
Japanese Description

おら見てしまったがら

おら見てしまったがら。あまりにも酷い。忘れようか忘れようかと毎日毎日悩んでるの、私。忘れられない。でもね、そんなことばっかり言ってられないしね。知事に来てもらったり、色んなもの納めてもらって感謝してます。津波が来るのを目の前で見てしまったからね。ここから見る津波と近くで見る津波、どれだけ違うと思いますか。

おら本当はさ、この村に津波来たとき、そんときね、高田の、ル・プルズ(ショッピングモール)で買い物してたのす。ここん中でいっぱい死んでしまったんだけど。そこにいたときに地震が来たのす。大きいからたくさん人がいたのね。話が出来ないぐらい揺れるんですよ。そんときね、立ってられねぇからすっと、言ったって語っても表わせねぇけど、落ちなんだ。スナック菓子とが棚のものが雨みてぇに降ってくるのす。棚さ飾ったものが落ちて、歩くとこねぇの。従業員さんが落ちたものを除けてくれたの。どうすっぺがっと思って泣くが人がたくさんいたんですよ。従業員さんがね、いっぱい出て来たんですよ。助けるべって。男が30人ぐらい出張って、助けたのす。

従業員さんも死んだ人もいたんですよ。自分が犠牲になったんですよ。助けてもらった人にね、抱っこされたかおんぶされて外に出たか、いまだに分かんないのす。もし出してもらえなかったら死んでしまばるなのす。立ってられねぇんだもん。あそこは田を埋めでね、建てたんだって、だから余計揺れが酷いんだって。あそこでねいっぱい死んでんのす。ちょうど買い物に行く時の赤い車で行ったのす。そんときちょうど運悪く買い物の時だったのす。

出されてからが大変なんですよ。速く走って、みんなの行くとこさ行きなさいよって従業員さんが言ってくれたんですよ。出来る限り速く走るでしょ、みんなに遅れないように。でも津波は速いんですよ。私たちの前にいるんですよ。こんな急な坂をね、登るんですよ、藪の中に。そしたら雪が降ってくるんですよ。寒いんですよ。寒くて寒くて仕方ないんですよ。おらそこで風邪引いてしまったのす。松葉医院でね、患者さんがいるんだでば。だから中にはいられないの。おらは患者さんでねぇんだから。ずっと外にいたんですよ。ガタガタブルブル震えながらね。

あの音が、今でも耳から離れねぇ

実際に津波を受け取ってねぇからさ、ね、分からないと思うけど、なった人はあまりにも傷が深すぎると思います、私は。本当に口先では表せない。何さ言っていいか分がんない。津波がとものすごいスピードで追いかけてきた。想像できない。

2階建てのおうちがね、簡単に流れるんだよ。それを私は見たんだけど、ものすげぇ勢いで流れてきて、1回回るんだけど。後の家もほら、流れてくるから、家同士でぶつかるのす。その時の音ね、今でも耳から離れねぇのす。ギシギシと言うだっけか、ビシビシッて言うか、ものすっごい音がすんのす。今でも耳から離れないの。あまりにもスピードが速くって。ものすげぇんだね。それをこの目で見てしまったがらね。忘れられない。それでもね、忘れようと努力してるんだけどね。毎日毎日今日も仮設の中で。でもね、またすぐ思い出すか分からない。忘れようとしてもすぐ頭に浮かんでくるのす。それがすぐ頭にさ、来るのす。それは、本当はいけないことなんだけんども、簡単に忘れられないの。それが津波を受けた人と、受けてない人の差なのす。津波のすごさとかね。渦が先に流れて後から流れて来た人ぶつかるところとか。見てしまったから、自然にショックが出て来たの。それで耳が聞こえなくなったの。

いくら語っても足りねぇんだ

泣いてくれたり、分かってくれたりすると少し楽になるんですよ。ドームの仮設住宅に2人、3人毎日話を聞きに来てくれたんですよ。その来てくれた人も泣いてくれましたよ。お話した時だけは少し忘れられるんですよ。だからすこし気持ちが楽になりました。でも少し経つとまた思い出してしまうんですよ。チリ津波の時はそんなことなくて、孤独になってたがら、今回に生かしたんですよ。

県から来た人が仮設に来た時に、仮施にいたおばあちゃんが「一晩ここに泊まってくれませんか」って言ったのす。寂しい、辛いって言ってたんだけど。近くに人がいるときはいいんだけどね。いくら語っても語っても足りねぇんだ。

津波は直接見た人じゃないとやっぱり分からないことがあるよ。テレビと違ってあまりにも酷かったんですよ。傷が深くて深くて、津波を見てしまったがら、辛い。あまりにも酷い。でも今はだいぶ片付いたんですよ。震災直後はびっくりしてしまって、手伝いに来てくれた人が。最初にだいたい、どうして生きたんですかって聞かれるよ。何回も何回も聞かれるよ。おらも生きたのが不思議に思ってる。

滝沢ヒロアキに会えたのす

夏ごろだったかな、渡辺謙さんと滝沢ヒロアキ(秀明)が来てくれたんですよ。それで渡辺謙さんは泣いてくれたんですよ。あの人サイン攻めにあってたんだよ。田舎では有名人にあったごと無いでしょ。来るのが珍しいことなんだよ。帽子にしてもらってる人もいたね。おらは飲み物のビンさしてもらったんでけど、その飲み物のビンに大切にしてたんだけど、どっかにやってしまったよ(笑)。

おれすごく滝沢ヒロアキのファンだったのさ。見た時は感動したね。嬉しくて、拍手してしまったのさ。本当にこの人が滝沢ヒロアキなのか、特別ね、あそこの責任者が人がいるのす。人がたくさん集まる大きな施設の館長さんの生まれが小友なの。だけんどもその人ね、ヒロアキを呼びだして私に会わせてくれたんですよ。特別。出てきたときに私夢のようなのす。この人が本当にヒロアキだべかってね。「おばあちゃんどうもね、ヒロアキなんですよ」って言って握手してくれたんですよ。すごく優しい人なんだね。大河のドラマで見てたヒロアキがさ、顔隠してね、おらと握手してるときにね、誰も気づかないのす。テレビに見てるときと実際に会うと別物だよ。震えが来るほどかっこよかった。家の壁に貼ってあるんだけど。みんなに「誰これ?」って聞かれるんだけど、これおらの息子なんだよって自慢するのす。誰も分からないものなのかね。

馬車でここまで嫁に来たのす

おらの生まれは広田で、結婚式が変わってんのす。来た時60年前だもの。広田から小友まで馬車で来たんだよ。珍しいんだよ。花嫁衣装着てきたよ。衣装はそんなにすごいものじゃなくてね、裾のほうに模様が入ってるだけなんですよ。部落の人呼んで大きな振る舞いしてもらったんだよ。旦那さんと2人で撮った写真と衣装は流れてしまったけんど。おらの時はす、今みたいに交際もなにもないのね。おらの相手になる人、どの人だか分からないのす、来るのす。どこで相手の人さ分かるかっていうと、袴さと白足袋履いてるのす。白足袋履いてる人だがらって言われてたがら、はあはあこの人なんだなって思うの。あんたたちみたいな現代の子には不思議でしょ。交際じゃなくても、見合い恋愛でもいいのす。私たちの親が押し付けてこっちさ行きなさい、あっちさ行きなさいってそうやってやるんだよ。泣き泣き。ほんとのことさ。おらも泣き泣き来たんだよ。いっぺんも会わない人と結婚するんですよ。想像できないでしょ。とてもとても。世の中は変わるけど人は変わらないのす。

1人好きな人がいればみんなに好かれる。素敵な人も現れる。人に好かれるっつうことはいいことなの。素敵な人を手に入れたいなら、勝ち抜かなければいけねぇんだ。

おらは悪いこと語ってねぇがら、糧にしてけれ。心の栄養に。そうしたらいいと思うよ。こんなことしたら教訓になるでしょ。なると思うよ。全然悪いこと話してねぇから。

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